黒猫の大吉(大福)くんの物語

新しい家族との出会い

大吉(大福)くんは『自分は猫』ということも、『家族』という存在も知りません。
ふる里には、沢山の仲間はいるけれど、家に帰れば独りきり、黙々と創作活動をしている芸術家です。

黒猫の大吉くん前から
黒猫の大吉(大福)くん

近ごろアイデアが浮かばず、落ち込んでいました。
そんな時にアドバイスをくれたのが、博識なボダさんでした。

ボダさん
博識のボダさん

ボダさんは、「何かを手放すと、新しい何かを手にすることができるから、慣れ親しんだこの場所を飛び出せば、きっと世界が開けるはずだよ。もしかしたら、大福くんには『家族』が必要なのかもしれないね。そうすれば、もっと豊かで実りのある暮らしが送れると思うよ。」と話してくれました。

(しかし、大吉(大福)くんはボダさんの伝えたいことが理解できませんでした。
『家族』って何だろう?まぁ良いか。飛び出せばわかるよね。やっぱり、のんきな大吉(大福)くんです。)

あれやこれやするうちに、ボダさんから北陸にある『家族』という何かを紹介されました。これが『家族』とは何かを知るきっかけとなったのです。

生まれ育ったふる里(福岡県)から、北陸に旅立つことを決めた大吉(大福)くん。町のみんなとの別れは寂しく、不安もあるけれど、もうひきかえせない!決めたからには最善を尽くすぞ!いざ出発!
勢いよく出発したものの、旅は長く遠く、途中で迷子になりながらも沢山の人に助けられ、なんとか新境地にたどり着いた大吉(大福)くんでした。そこは雪が沢山降り積もり、白山連峰が望める、のどかな港町でした。

町を歩いていると、ところどころに古い木造の家々や社寺が建ち並び、みな屋根には真っ黒な屋根瓦をのせています。その黒瓦の、ぬめるような艶が、海に沈む夕日を浴びてきらめく光景がとても神秘的で美しく感じた大吉(大福)くん。なんだか妖艶な微笑をうかべているようで、うっとりしちゃう。

(やっぱり古くて美しいものに魅了される大吉(大福)くんです!これまで、皆から言葉が大げさだって笑われてきたけど、感動したときには、どうしても言わずにはいられないんだ!だって大きな感動には大げさな言葉がふさわしいでしょ。)

この海や空は僕のふる里と繋がっているんだろうなぁ…色々と想像を巡らせながら、ボダさんから紹介された『家族』があるという家に到着した大吉(大福)くん。大吉(大福)くんの到着を待ちわびていたのか、全員が揃って出迎えてくれました。そして、それぞれ自分達の紹介をしてくれました。名前は、『パパ』、『ママ』、『長男 』、『次男』。特に長男は、物静かでとっても物知りな優しいお兄ちゃん。(ボダさんみたい。)

お兄ちゃんたちと

大吉(大福)くんがくつろいでいると、お兄ちゃんが話しかけてきました。

「キミのことはボダくんから聞いているよ。ボダくんは僕の友達なんだ。キミは大福くんでしょ!遥々、遠い福岡県から来たんだよね!猫の足じゃとっても遠かったでしょ。」と、旅の労をねぎらってくれる、お兄ちゃん。

(もう『大福』で良いや!と思う大吉くんでした。)

それに対して、大福くんは「ねこの足」と聞いてあっけにとられていました。
ねこ?ネコ?neko?ねこの足?何それ?頭の中がパニック状態です。『ねこの足』じゃなく自分の足で来たんだけどなあ…と思いましたが言葉が出てきません。キョトンとしている大福くんに、お兄ちゃんは教えてくれました。「僕たちは犬、大福くんは猫、だから『猫の足』って言ったんだよ。」
お兄ちゃんは動物図鑑を開いて教えてくれました。「これが犬、これが人間、それで、これが猫!まだまだ、この世界には沢山の動物が生存しているんだよ。ちなみに、パパとママは人間、この家は犬と人間が共生して暮らしている『家族』なんだ。」(それでも、大福くんは、『家族』というものが理解できません。)

うーん、家族ってなんだろう?

そんなこんなで、大福くんの新生活がスタートしました。大福くんにとって、新しい暮らしは驚くことばかり。違ういきもの同士が関わり合って生活することは、とても大変だからです。言葉も生活スタイルも違うから、僕がして欲しいこと、伝えたいことがパパやママには分かってもらえない…お兄ちゃん達には伝わるのに…おかしいよね…『家族』って何だろ?悩むことも沢山ありました。

そんな大福くんに、お兄ちゃんたちは教えてくれました。「パパとママ (人間)って色々ふくざつで、動物社会で生きていくには、まだまだ未熟だから、トレーニングが必要なんだ。僕たちも本を読んで勉強したんだ。トレーニングには『陽性強化』が効果的らしいよ。だから、パパとママに『ないものねだり』をしても効果がないんだ。小さな成功を褒めて教えることが大切なんだ。大福くんもパパとママに色々と教えてあげてね。小さな成功はそこかしこに隠れているから宝探しゲームだと思って楽しむことが大事なんだ。」

雪と大福くん
寒い・・・

それから毎日のように大福くんは、お兄ちゃん達と宝探しゲームを始めました。すると、驚くほどに毎日が新鮮に感じ、色々な発見や新しい経験を楽しむことができるようになりました。

これは、、、かわいいのかな?
似合ってる?

お互いの足りない部分を補い合いながら生活することは、彼自身の心の成長にも繋がり、ようやくボダさんが伝えたかった『家族』の意味について知ることができ、世界にただ一つの大切な宝物を手に入れたのでした。

これをきっかけに、彼の目を通して見える世界は色とりどりに輝いていきました。

(おわり)


お客さまからいただいた物語。黒猫の大吉くんは大福くんとなり、今は北陸で楽しく暮らしているようです。
お写真もたくさんいただきました。どれもとてもかわいくて、ほんとにかわいがってもらっているのが伝わります💕
物語の続きやかわいい写真、またお待ちしています(o^―^o)ニコ

黒猫の大吉くん
https://antoco.net/daikichi/

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